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EC事業者にとって越境ECの流れは無視できない状況です。いまさら聞けない?越境ECのことばの意味や定義をご存知ですか。

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目次

グローバルな時代と言われて久しい昨今ですが、ネットの時代になってからヒト・モノ・カネが以前にも増して国境を越えて自由に移動しています。今回は、その中でもモノとカネがネットを通してグローバルに移動する越境ECについて、5つの章に分けて解説します。

越境ECとは?

最近の日本では、猫も杓子(しゃくし)も越境ECに取り組んでおりますが、まずは、「越境EC」という言葉の意味からおさらいしたいと思います。

いまさら聞けない?越境ECのことばの意味

越境:境界線を越えること、国境を越えること
EC:ネットやPCなどの電子的な手段を介して行う商取引のこと(電子商取引)

ついでにいえば、「EC」は二つの英単語の略です。

E:Electronic…電子の
C:Commerce…商業、通商

つまり、「越境EC」とは、「ネットを介した海外ショッピング」ということになります。
ちなみに、主な外国語における越境ECの呼び方は下記のとおりです。

英語:Cross-Border Business
中国語:跨境电商(クァジンデンシャン)

越境ECの定義

欧州委員会(European Commisiion)では、過去に実施した越境取引(Cross-Border Shopping)に関する消費者へのアンケート調査の結果、越境ECを下記のとおり定義しました。

「越境ECとは、消費者が居住している国以外にある(位置している)販売者または提供者からの全ての購買である。」

そして、この中にはインターネット等による他国に所在するサプライヤーからの遠隔購買が含まれていますが、自国内に所在している販売者からの外国製品の購入は含みません。

また、中国の検索サイト「百度」(日本のヤフーやアメリカのグーグルのような検索サイト)では、越境ECビジネスを下記の通り定義しています。

 1.(買手と)異なる国に属する商品
 2.ECサイト(プラットフォーム)を通して取引を成立させる
 3.ECサイト(プラットフォーム)を通して支払い及び決済する
 4.越境物流を通して商品を送る

そして、「これらにより完結する国際商業活動の一つであり、B2Cを主とする商取引である。」とされています。つまり、日本に住んでいる方が、日本の楽天やアマゾンジャパンなどのECサイトで商品を購入する場合は、「ECビジネス」であっても、あくまで国内のサイトから国内にある商品を国内の消費者に受け渡しているだけで、商品は越境していません。つまり、この場合は、越境取引にあたりません。

他方で、日本に住んでいる方が、アメリカのイーベイやアマゾンドットコム、中国のタオバオや天猫などのサイトで商品を購入及び決済し、業者に頼んで日本まで配送してもらった場合は、越境ECとなります。

越境EC主要各国の状況

世界のB to C電子商取引市場規模

2015年の世界のB to C電子商取引市場の規模は1兆6,700億USドルで、対前年比成長率については、2015年25.1%の伸びがあり、2019年まで対前年比2桁成長が見込まれています。

■世界の各国別B to C電子商取引市場規模の成長率

電子商取引の上位9市場では、対前年比2桁成長をしていることがわかります。次図のデータは物販系、サービス系を含み、旅行関連とイベントチケットを含まない市場規模数値ですのでご注意ください。

■世界の各国別B to C電子商取引市場規模2014年・2015年

次図では、2014年と2015年のB to C EC市場規模をグラフ化したものです。次図で示す通り中国、米国の市場は世界的に見ても規模が大きく存在感があります。特に中国におけるEC市場規模の拡大は目覚ましいです。

■日本・米国・中国各国におけるECマクロ環境

日本を基準に考えた場合、米国は日本の約 3.8 倍、中国は日本の約 7.5 倍のEC市場規模があります。また、インターネット人口については、日本は約1.00億人、米国は約2.79億人、中国は6.73億人の規模になり、インターネット普及率については、固定系だけではなくモバイルも含めた場合、日本82.8%、米国は87.4%と推計される一方、中国は49.3%と、他国と比較して差があります。
中国は、所得の上昇やインターネット環境の整備等に伴い、今後インターネット人口については増加傾向にあるため、 EC市場についてもますますの規模拡大が見込まれています。
日本では、越境ECが注目を集める一方で、アメリカや中国と比べて市場規模がまだまだ小さく、対応も遅れており、まだまだ発展途上といえます。

■越境EC取引市場規模

2015年において、日本の消費者による米国及び中国事業者からの越境 ECによる購入額は2.2千億円(前年比 6.9%増)、米国の消費者による日本及び中国事業者からの越境 EC による購入額は9千億円(前年比 11.1%増)、中国の消費者による日本及び米国事業者からの越境ECによる購入額は1.6兆円(前年比 32.7%増)となりました。
日米中3か国相互間の消費者向け越境EC市場の中では、中国の消費者による購入額が最大の規模となっており、前年比の伸びも大きなものとなりました。これはここ数年同様での傾向です。
2019年までの越境EC市場規模を試算したところ、消費国としての推計市場規模は、2015年から 2019年までの間に日本は約1.5倍、米国は約1.6倍、中国は約2.9倍の規模となり、日米中3か国間における越境 EC による購入総額合計は、2019年までに約6.6兆円にまで拡大する可能性があることがわかりました。

事例と課題と解決方法

■越境ECの展開パターン

事業者がECを介して自国以外の消費者に物品、サービスを販売する場合、次図のとおり、大きく5つのパターンに分類できます。

1.スキームⅠ(自国内自社サイトの場合)

自国内で独立したB to C-ECサイトを展開する方法です。自国外の消費者が自国内のB to C-ECサイト上で、個人輸入の形態で商品を購入します。事業者側は、自国内のB to C-ECサイトの翻訳・多言語対応ページの対応、自国外の消費者の問合せ対応、国境を跨いだ配送手配等を原則自社で対応する必要があります。

2.スキームⅡ(日本の事業者が楽天やアマゾンジャパンに出店する場合)

自国内の海外対応B to C-ECプラットフォームに店舗を出店する方法です。自国外の消費者が自国内のECプラットフォーム上のB to C-ECサイトで、個人輸入の 形態で商品を購入することはスキーム 1 と同様ですが、越境商取引に伴う必要事項・諸対応について、プラットフォーム側より様々なサポートを受けられることや海外向けのEC展開のノウハウが少ない事業者も、国外市場へアプローチし易いというメリットがあります。反面、プラットフォーム側の提供サービス・方針にビジネスが左右されるというデメリットもあります。

プラットフォームが提供する海外展開支援サービスの事例としては、商品説明ページの翻訳対応、消費者からの問合せ対応、海外向けの決済手段の提供、海外への配送サポートなどが挙げられます。事業者が出店する際には、基本的に相応の出店費用や手数料が発生するケースが一般的です。

3.スキームⅢ(日本の事業者が中国のタオバオやアメリカのイーベイに出店する場合)

進出先国のC to C-ECプラットフォームに店舗として出店する方法です。中国におけるAlibabaの淘宝网(Taobao)が代表的な事例です。本来、消費者間の商取引をメインターゲットにしたプラットフォームであるため、出店手数料・登録料が無料あるいは安価であるなど、プラットフォームへの出店のハードルは非常に低いのが一般的です。淘宝网の事例のように、こうしたプラットフォームへは個人名義だけではなく法人名義で出店することが可能なケースも多く、特に中小規模の店舗・事業者の海外展開の際によく活用されています。

4.スキームⅣ(日本の事業者が中国の天猫やアメリカのアマゾンに出店する場合)

進出先国のB to C-ECプラットフォームに店舗を出店する方法です。基本はスキーム3と同様だが、B to C-ECプラットフォームの場合は出店の際に一定の審査を設けていたり、国内B to C-ECプラットフォームと同様に出店手数料等の諸費用が必要となるなど、参入のハードルはスキーム3より高くなります。また、国によっては、国内企業保護目的などにより、国外法人の越境商取引やインターネットサービス参入に関して法的規制を設けているケースもあります。

一方、こうした現地のBtoC-EC プラットフォームを活用することは、集客や店舗への信 頼性の獲得、現地での商取引に伴う決済手段・物流インフラの活用がし易いなどの有利な点があります。特に、決済に関しては、国によって決済インフラの普及率や利用状況が異なるため、こうしたプラットフォームを活用するメリットは大きくなります。

5.スキームⅤ(販売先国における自社サイト)

進出先国で独立して自社B to C-ECサイト・サービスを展開する方法です。プロモーション施策、EC サイトのデザイン、機能の自由度が相対的に高まる一方、進出先国の法制度や、商慣習に合せたオペレーション等への対応を全て自社でカバーすることが前提となります。

■越境ECの代金決済

先程少し触れましたが、進出先国のB to C-ECプラットフォームに出店する方法(たとえば、日本の事業者が中国の天猫やアメリカのアマゾンに出店する場合)における最大のメリットは、代金回収が容易なことです。というのも、繰り返しになりますが、国によって決済インフラの普及率や利用状況が異なるため、こうしたプラットフォームを活用するメリットは大きくなります。


日本やアメリカなどの先進国ではほとんどの人がクレジットカードを所有しており、また、中国などの新興国でも富裕層から中間層の間でかなり普及していますが、発展途上国ではそもそもクレジットカードを保有していない人が大半であり、よって、これらの国々では銀行振り込みによる決済が一般的です。

他方で、中国ではスマホチャットアプリのWeChatによる決済がかなり普及しており、タオバオも基本的に支付宝(アリペイ)によるオンライン決済が一般的です。一昔前の中国は、現在日本の家電店でも普及している銀聯(ギンレン)を用いたデビットカード決済が一般的でしたが、現在はほとんど使用されておりません。

海外でECビジネスを展開する場合は、このような現地の新しい商習慣や決済システムの動向を素早く察知し、取り込むことが不可欠ですが、これ以外にも、たとえば、中国のように自国通貨(元)の持ち出し規制をしている国では、政府の政策の動向にも特に注意を払う必要があります。これは、本項の代金回収リスクに限らず、越境ECにおいて解決が不可欠なその他の二つのリスク、つまり、在庫リスクや配送リスクについても同様であり、現地の政策やトレンドを常に把握できる体制を整えておく必要があります。

■越境ECにおける在庫と配送

越境ECにおける商品の保管に関しては、大きく分けて、
①進出先国で保管する場合
②経由地で保管する場合(中国における香港など)
③自国で保管する場合
の3つのパターンがあります。いずれの場合も、メーカー、仲卸(あるいは商社)、小売りかで異なりますし、また、販売在庫か委託在庫(自社の在庫として販売店の棚あるいはサイト上で販売)かによって、異なる在庫リスクがありますが、ECサイトで販売する場合は、サイト内で商品が売れ、決済されてから配送することもできるため、一般的なオフライン(店舗販売)よりは在庫リスクは低くなる傾向にあります。

越境ECにおける国際配送に関しては、商品の数が少なければ、EMSやDHL、FedExなどの国際航空配送サービスを使用し、大量の場合は、20フィートや40フィートコンテナなどにより、海上輸送するのが一般的です。
ただ、いずれの場合も最大の課題は「通関」です。ほぼすべてのECプラットフォームは越境配送サービスまでは手を出しておらず、このため、プラットフォームを用いて販売するにせよ、自社サイトで販売するにせよ、基本的に物流に関してはすべて自社で選択あるいは手配する必要があります。

通関トラブルに巻き込まれて商品が遅配した場合は信用問題となるため、よって、この通関リスクにいかに対応するかが、代金回収リスクと併せて越境ECにおける最大の課題であるといえるでしょう。

■在庫及び代金回収リスクへの対応方法

自社サイトの場合は、サイト上で商品の注文があっても、何日以内に入金がなければ発注を自動キャンセルする。クレジットカード決済が一般的でない国では、PayPal(ペイパル)を導入することでクレジットカード対応するなど、対象国のビジネスモデルにあったシステムの構築が必要です。
一方で、国内外のプラットフォームを使用する場合は、プラットフォーム毎にルールが異なるため、安易にプラットフォームの規模のみで決めず、自社にあったプラットフォームとプランを選ぶ必要があります。

■通関及び物流リスクへの対応方法

通関に関しては、輸出先国の法律を理解し、適正な税金を支払う(あるいは消費者のお客様に支払ってもらう)とともに、違法な商品を輸出しないということに尽きます。物流に関しては、最初は少量で陸海空の様々な業者を試し、安心できる業者を地道に探すということに尽きます。

インバウンドからの越境への繋ぎこみ

越境ECと海外からのインバウンドは一見するとあまり関係がないように感じますが、実は深く関係しています。特に日本の商品が海外でバカ売れしていることと、訪日観光旅行客とは密接に関わっています。

流れを説明しますと、まず最初に、海外の方が日本に観光旅行に訪れます。そして、日本の文化や自然に触れるとともに、多くの日本の商品(食品、化粧品、雑貨など)に触れることになります。そこで、彼らが感じるのは、大抵の場合、自国の同類の商品より日本のそれの方が高品質であるという点です。

そんな彼らも、ひとときの観光旅行が終われば、また自国へと戻って元の生活に戻ります。ただ、一度日本の高品質の商品を知ってしまった彼らは、また日本の商品を買いたくなります。

このときに出番となるのが「越境EC」の方法です。

海外の商品をECサイトで購入する場合、為替変動や配送料などの各種手数料が加算されるため、基本的には割高となりますが、もう一度日本へ行く経費や時間と比較すれば割安になる場合が多いため、越境ECの方法により継続的に購入します。

ところが、このように越境ECにより日本の商品を購入し、継続的に使用することで、かつて旅行に行っていた時の思い出が常に刺激され、最終的にまた日本に行きたいと思うようになり、やがて、買い物も兼ねてまた日本へと旅立つのです。

あとは、これの繰り返しです。実際にこのループに陥っている多くの外国のお客様に日本は助けられている感が否めません。

また、日本の漫画やアニメなど、ソフトパワーもこのインバウンド&越境ECのループに一役買っています。実際、日本語を勉強している海外の人や日本に興味を持つ海外の人の多くは、子供の頃に日本の漫画やアニメに触れて日本を好きになった人がほとんどです。もちろん、かつて成功を収めた日本企業のビジネスパワーに惹かれて日本に興味を持つ人も少なからずいますが、インバウンド&越境ECに関していえば、大半は、日本のソフトパワーの貢献によるところが大きいです。

近年の日本は少子高齢化により国内市場が縮小する一方ですが、第2章でも触れたように、アメリカと中国という世界の2大市場に限っても、合計すると日本の商品が一番売れており、今後も当分はこの流れが続くと思われます。

ただ、ここで気をつけていただきたいのは、商品が越境するということは、外国での輸出時と自国での輸入時とで計2回の通関が発生するということです。これにはさまざまな法律や規則が絡んできます。つまり、単純にサイトをつくってお客様が購入してくれればOKというわけにはいきません。特に、日本の商品を中国やアメリカなどの海外へ販売する場合は、現地の輸入規制や税率なども加味して販売する商品や価格などを決定する必要があります。

さらに、商品代金の回収に至っては、中国など国によっては外貨の持ち出し規制があり、そうでなくても為替の変動リスクがあります。また、支払方法や決済方法も多岐にわたり、クレジットカード決済が一般的な国もあれば、国民のほとんどがクレジットカードをもっておらず、送金が一般的な国もあり、加えて、中国におけるWeChatペイやアリペイのようなその国独自の決済方法もあり、各国の事情に併せた決済方法に対応する必要があります。

このように、越境ECビジネスには様々な壁が立ちふさがっていますが、逆にいえば、参入障壁が高い分、仕組みを構築できた暁には大きなチャンスが潜んでいます。特に、世界の越境EC市場はまだまだ拡大する可能性が高いといえるでしょう。

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